ミトコンドリア呼吸鎖(電子伝達系)複合体と活性酸素種ミトコンドリアとは ミトコンドリアは、直径が0.5〜1µmの細胞小器官で、細胞全体の約10〜20%を占めています。ミトコンドリアは極めて運動性の高い細胞小器官で、細胞質内を微小管に沿うように移動したり、エネルギー(ATP)消費量が多い部位に局在していたり、ミトコンドリア同士で融合や分裂をして、常に柔軟に変形していることが報告されています。 Show 呼吸鎖(電子伝達系)複合体と活性酸素種ミトコンドリアは好気呼吸におけるエネルギー産生の場として、重要な細胞小器官です。ミトコンドリア内膜上にある呼吸鎖複合体において、酸化還元反応を利用したエネルギー代謝により、ATPを産生しています。具体的には、複合体 I ではNADH、複合体 IIではコハク酸をそれぞれ酸化することで、ユビキノンを還元してユビキノールにし、複合体 IIIでユビキノールを酸化することでシトクロムcを還元します。複合体IVでシトクロムcが酸化され、酸素分子に電子を伝達することで水に還元します。この過程でミトコンドリア内膜を隔ててH+勾配が生じ、このH+勾配を駆動力としてATPを合成します。電子伝達の際に、複合体Iや複合体IIIから漏れ出した電子によって、酸素分子が一電子還元され、スーパーオキシドが発生します。ミトコンドリアの膜間腔側に発生したスーパーオキシドはSOD1、マトリックス側に発生したスーパーオキシドはSOD2が酸素と過酸化水素に不均化し、過酸化水素はグルタチオンペルオキシダーゼやペルオキシレドキシンによって水へと還元されます(図)。このように、好気性生物のミトコンドリアからは絶えず活性酸素種が発生していますが、抗酸化酵素により消去されてレドックス(酸化還元)バランスが保たれ、恒常性は維持されています。しかし、老化や疾患などにより活性酸素種の過剰発生や抗酸化能が低下すると、レドックスバランスが崩れ、酸化ストレスが引き起こされます。またミトコンドリアDNAは呼吸鎖複合体の一部のサブユニットをコードしていますが、ヒストンタンパクによるクロマチン複合体構造が存在せず、DNA修復機能が弱いことから、活性酸素種に脆弱と考えられており、核DNAに比べ傷害を受けやすく遺伝子変異も蓄積しやすいことが報告されています。そのためミトコンドリアDNAの傷害は、呼吸鎖複合体の分子構築の異常、ひいては電子伝達効率の低下と活性酸素種発生量の増加を引き起こすと考えられています。 図 ミトコンドリアにおける活性酸素種の発生と消去 近年、呼吸鎖複合体は、スーパーコンプレックス(超複合体)を形成していることが徐々に明らかになってきています。スーパーコンプレックスの形成に関わる因子として、カルジオリピンは複合体IIIとIVとの結合に関与し、COX7RP(cytochrome c oxidase subunit 7a)は複合体IIIとIVが結合した複合体と複合体Iとの結合に関与することが報告されています。また、臓器や加齢に伴いスーパーコンプレックスの構成が異なるという報告もあります。スーパーコンプレックスの形成は、電子の伝達が複合体間で直接的に行われることで、ATPの産生効率が上がると共に、電子のリークによる活性酸素種の発生を抑制するのではないかと推測されています。老化や神経変性疾患の一因として、酸化ストレスが関与していると考えられています。私たちの研究室では、神経変性疾患や加齢に伴うミトコンドリア機能変化(異常)について、スーパーコンプレックス形成やスーパーオキシドの発生などに着目して研究をしています。興味のある方は、ぜひ研究室のホームページも覗いていてみてください。 お問い合わせ先 東邦大学 理学部 〒274-8510 【入試広報課】 【学事課(教務)】 【キャリアセンター(就職)】 【学部長室】 第六部:生化学の基礎 脂質☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒ “基礎化学(目次)“ ⇒ここでは,物質代謝で重要な役割を持つ ATP の生成とクエン酸回路の関係について, 【 ATP とは】, 【 ATP の合成反応】, 【 ATP 生成量】 に項目を分けて紹介する。ATP (アデノシン 5'-三リン酸) りん酸
1分子の離脱によりエネルギーを放出し,放出した分子がりん酸と結合することでりん酸エネルギーを貯蔵することができる化合物である。また,物質の代謝・合成において重要な役目も果たしている。 ATP の表記は,ヌクレオチドの一種で,五炭糖のリボースであるアデノシン三リン酸( Adenosine TriPhosphate )の赤字のアルファベットを用いた短縮形である。なお,IUPAC 名は,アデノシン 5'-三リン酸である。 ATP は,リボースの 5'-ヒドロキシ基にリン酸エステル結合により 3分子のリン酸が連続して結合した構造のものであるが,1分子のリン酸基が結合したものを AMP( Adenosine MonoPhosphate ,アデノシン一リン酸,アデニル酸),2分子のリン酸基が付いたものを ADP ( Adenosine DiPhosphate ,アデノシン二リン酸)という。 エネルギーの放出 ATP は,エネルギーを要する生体反応に必ずといえるほど使用されている。例えば,解糖系の グルコースのリン酸化など,糖新生などの生合性反応,筋肉のアクチン・ミオシンの収縮,濃度勾配に逆らって物質移動する能動輸送,RNA 合成の前駆体などである。 CoA (補酵素A ,コエンザイムA ),ADP,ATP ページのトップへ ATP の合成反応ATP は,解糖系やクエン酸回路などでも ATP
は生じるが,主に酸化的リン酸化(ミトコンドリア内の電子伝達系に共役して起こる反応で,水素イオンの濃度勾配を利用した ADPのリン酸化),光合成・明反応における ATP 合成酵素による光リン酸化によって生じる。
酸化的リン酸化( oxidative phosphorylation )
具体的には,ミトコンドリアのマトリックス側(内膜の内側)で発生したプロトン( H+ )を膜間スペース(外膜と内膜の間)へ汲み出すことで,ミトコンドリア内膜を隔てて,隙間スペースが高濃度となる H+ の濃度勾配が生じる。このため,マトリックスと膜間スペースの間に電位差が生じる。 なお,“プロトンの汲み出し”に関し,水素受容体( NADH2+ ,FADH2 など)の酸化により,グルコース 1 分子あたり 100 個以上のプロトンがミトコンドリア内膜の外に放出されるといわれている。 ページの先頭へ ATP の生成量細胞呼吸によるグルコース1分子( C6H12O6
)からの ATP 生成量は,一般的な教科書では 38当量となっている。 この内訳は, 【参考】
FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド: flavin adenine dinucleotide ) ページの先頭へ |