2021.06.16 更新: 2022.04.27 住宅性能評価とは?メリットや手続きを解説!家の購入を考えて物件探しをしていたところ、「住宅性能評価」や「住宅性能評価書」という言葉を耳にしました。住宅性能評価とは何ですか?また、どのような物件に住宅性能評価書が付いているのか、気になります。 住宅性能評価とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき創設された「住宅性能表示制度」という制度のなかで、国が設けた住宅の品質に関する基準に対して、第三者機関が性能表示するために客観的に行う評価のことです。また、住宅性能評価には、種類が2つあり、評価基準は、10分野32項目あります。申請をして検査を受け、一定の評価基準を満たしていると認められた物件が評価書を取得できます。情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸 住宅性能評価とは?これからマイホームを買ったり建てたりする予定がある人は、長く安心して安全に暮らせる家が欲しいですよね。家の質を確かめることのできる1つの手段として「住宅性能評価」というものがあります。住宅性能評価とはどのようなものなのでしょうか? 「購入したい物件に住宅性能評価書が付いていた」「これから建てる物件に住宅性能評価書を付けたほうがよいのかよく分からない」という人のために、住宅性能評価について、その概要や評価項目、メリットなどを詳しくご紹介します。 住宅性能評価は、「住宅性能表示制度」に基づいて定められた住宅の性能に関する基準に対して、国に登録した第三者機関が客観的に行う評価です。そして住宅性能表示制度とは、国が定めた基準によって全国一律に、異なる工法で建設された住宅であっても比較できるようにする制度です。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(いわゆる「品確法」)」に基づく制度の1つで、良質な住宅を安心して購入できるようにするために定められました。 ちなみに、品確法は住宅性能表示制度を含む以下の3本柱で構成されています。 ・さまざまな住宅の性能を分かりやすく表示する住宅性能表示制度の制定 それでは、住宅性能表示制度に基づく住宅性能評価とはどんなものなのか、詳しく見ていきましょう。 ※イメージ写真 住宅の性能を比較できる評価制度 この制度に基づいて、国に登録した第三者機関である、登録住宅性能評価機関が検査を行い、「住宅性能評価書」が発行されます。住宅性能評価で一定の基準を満たした住宅は、住宅ローンの金利の優遇や地震保険料の割引などさまざまなメリットがあります。 また、2022年4月より住宅性能表示基準の一部が改正され、一次エネルギー消費量等級と断熱等性能等級で最高等級が上に1つずつ増えました。これにより、住宅性能をより優れた住宅について詳しく比較できるようになります。詳しくは、こちらをご覧ください。 住宅性能評価は2種類ある なお、建設性能評価を受けるためには、事前に設計住宅性能評価を受けて基準を満たしている必要があります。 ※イメージ写真新築住宅は10分野で評価される
住宅性能評価の対象となる項目は、新築住宅の場合10分野32項目あります。2015年4月1日の住宅性能表示制度の改正により、評価の必須科目が「構造の安定」、「劣化の軽減」、「維持管理・更新への配慮」、「温熱環境」の4分野9項目に緩和されたため、住宅性能評価書を得たい場合は、最低この4分野の評価を受ければよく、その他の分野は依頼人が任意に選択することができます。 [ 1 ] 構造の安定(必須) [ 2 ] 劣化の軽減(必須) 住宅の構造によって評価方法は変わり、たとえば鉄筋コンクリート造の場合は、セメントの種類やコンクリートの水セメント比、コンクリートの品質、空気量といったものが評価されます。 [ 3 ] 維持管理、更新への配慮(必須) また、マンションのような共同住宅では、共用部分にある共用配管についても同様に維持管理の容易さを評価します。 [ 4 ] 温熱環境(必須) ●ZEHに関する記事はこちら いま注目のZEHとは?マンション(ZEH-M)のケースを紹介 ZEHの概要や住むメリット、今後の展望などについてご紹介しています。 ※イメージ写真 [ 5 ] 火災時の安全 マンションなど共同住宅では特に避難を容易にするために、共用廊下に講じられる対策や、住戸間の堺となる壁・床の火や熱を遮る時間の長さ、3階以上の建物の場合は共用廊下を利用できないときに脱出するための対策など、さらに細かな項目もあります。 [ 6 ] 空気環境 [ 7 ] 光・視環境 [ 8 ] 音環境 [ 9 ] 高齢者等への配慮 [ 10 ] 防犯 住宅性能評価を受けた物件のメリットは?住宅性能評価を受け、住宅性評価書が交付された物件を購入する場合、さまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。 住宅の性能が数値化されていて比較しやすい また、住宅性能評価書が交付されていることで、一般住宅に比べて優良な住宅であるともいえます。さらに、物件を比較するためでなくとも、その住宅について自分が求める性能をもっているか、評価書に記載された評価を見て選ぶことも可能です。 住宅ローンや地震保険が優遇される可能性がある さらに住宅性能評価書が交付された住宅は、記載されている耐震性能に応じて、火災保険に特約として付けられる、地震保険の割引を受けられる可能性があります。割引率は、評価された耐震性能の等級に応じて定められています。
なお、住宅性能表示制度に対して、所定の基準を満たした住宅を「長期優良住宅」として認定する、長期優良住宅の認定制度があります。住宅性能評価制度は、新築あるいは中古の住宅がどのような基準を満たした住宅か評価する制度である一方、長期優良住宅制度は、決められた基準を満たして建設された住宅を認定する制度で、制度の趣旨は異なります。 ●長期優良住宅に関する記事はこちら 長期優良住宅とは?そのメリットと、認定を受ける方法を解説 長期優良住宅のメリットや認定条件、注意点などについてご紹介しています。 ※イメージ写真 トラブル時に専門機関が対応してくれる 指定住宅紛争処理機関は、裁判ではないため、依頼費用も安く済み、迅速で円滑な解決が期待できるます。手数料は1件あたり1万円で、弁護士や専門家の仲裁や調停を受けることが可能です。 住宅の欠陥(瑕疵)のリスクを減らせる 品確法により、全ての新築住宅は、柱や梁、屋根など基本構造部分については、10年間の瑕疵担保が保証されます。さらに建設住宅性能評価まで取得した住宅では、設計段階に加え、建設段階での評価が行われるため、建設業者は基準を満たすよう施工しなければなりません。そのため、建設住宅性能評価書が付いている住宅は、より慎重に建設されるため、欠陥(瑕疵)の発生リスクも少なくなるのです。 ●瑕疵に関する記事はこちら 瑕疵の意味とは?不動産売買で知っておきたい責任について! 瑕疵の概要や瑕疵に対する責任などについて紹介しています。 中古物件でも売却しやすい 住宅性能評価はどのように行う?取得することでさまざまなメリットが得られる住宅性能評価(書)ですが、相応に必要な手続きがあります。詳しい仕組みや評価の流れについて確認しておきましょう。 建設住宅性能評価書を取得する必要は? そのため、設計住宅性能評価を受けた後、建設住宅性能評価を申請し、その評価を受けて建設住宅性能評価書を取得することで、より確実に評価基準を満たす住宅であることが評価、証明されます。建設住宅性能評価は、こうした点で取得する意味があります。 建設住宅性能評価書を取得するには、設計住宅性能評価を受けているのが前提となり、設計住宅性能評価を申請後、建設中や完成時に検査を受ける必要があります。 特に、注文住宅で住宅性能評価書の取得を考える場合は、設計段階からあらかじめ評価を受けたいと希望する項目と建物のグレードを伝えて、専門家(建築士、設計担当など)と協議しておく必要があります。 ※イメージ写真 建設住宅性能評価書の取得の流れは5ステップ [ 1 ] 事前相談と申請 作成された住宅の設計図書とそのほか必要な書類をそろえて、指定の住宅性能評価機関へ事前に相談。事前相談の段階で、評価員とどの項目のどの等級を希望しているのかなどを伝え、必要があれば、修正したほうがよい点などを指摘してもらえます。その審査(評価)に必要な書類の確認後、設計住宅性能評価の申請を行います。 住宅性能評価機関は、国土交通省の「住宅の品質確保の促進等に関する法律における登録機関」や一般社団法人 住宅性能評価・表示協会の「評価機関リスト」で調べることができます。 [ 2 ] 設計住宅性能評価の実施 [ 3 ] 設計住宅性能評価書の交付 [ 4 ] 建設住宅性能評価書の申請 [ 5 ] 建設住宅性能評価の実施 現場での検査には通常、申請者の立ち会いが必要です。もし、設計住宅性能評価書の記載と実際の工事に違いがある場合には、是正工事または設計住宅性能評価書の変更申請が必要になります。全ての検査が終了し、建物の検査済証の交付後、設計住宅性能評価書の記載と適合した場合に建設住宅性能評価書が交付されます。 ※イメージ写真住宅性能評価の注意点住宅性能評価書を取得することで、住宅ローン金利や地震保険料の優遇、トラブル発生時に迅速に対応してもらえる第三者機関が利用できるなど、さまざまなメリットがあることをお伝えしました。その一方で住宅性能評価書の取得には、いくつか注意しておくべきことがあります。以下で詳しく説明していきます。 費用がかかる また、評価項目の数が増えれば、それに適した仕様とするため、工事費用も高くなる恐れがあります。どの分野・項目の評価書を取得できる住宅とするかは、自分の生活スタイルや住まいで重視するポイントを整理して、コストと比較しながら、検討するようにしましょう。 なお、既存住宅(一戸建て)の場合は、面積や調査(評価)項目のほか、設計図書の有無でも料金が異なり、新築よりも高い金額になる傾向があります。 等級が高ければよいというわけではない
必ずしも絶対安心というわけではない ただし、設計住宅性能評価書を取得し、建設住宅性能評価書まで取得した住宅は、ほかの一般的な住宅に比べてトラブルは起きにくいとはいえます。そのため、紛争処理機関が利用できるようになっています。 住宅性能表示制度を利用して安心できる住宅を手に入れよう!住宅性能評価書が交付された住宅は、購入価格が少し割高になることがあります。しかし、住宅ローン金利の優遇が受けられたり、地震保険の保険料が安くなったりと、長い目で見るとお得になる可能性もあります。また、建物に関して施工上の争いが起きた場合でも専門の機関に紛争解決を依頼できるといったメリットもあります。何より長く安心して暮らせる住宅という価値は代えがたいものでしょう。 これから住宅の購入を検討している人は、気になる物件に住宅性能評価書が交付されているかを確認してみるのもおすすめです。また、注文住宅を新築する予定がある人は、費用はかかっても住宅性能評価書の取得を検討してみてはいかがでしょうか? 住宅性能表示制度の住宅性能評価を利用して、安心して暮らせる住宅を手に入れるべく、ぜひ検討してみてくださいね! ※イメージ写真情報提供:不動産コンサルタント 秋津 智幸 不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。不動産コンサルタントとして、物件の選び方から資金のことまで、住宅購入に関するコンサルティングを行なう。 住宅性能評価書 どこでもらえる?住宅性能証明書とは、「その住宅は良質な住宅である」ということを証明するための書類です。 住宅性能証明書を手に入れるためには、全国の評価センターや保証検査機関などで審査してもらうことが必須です。
住宅性能評価書 いくら?住宅性能表示制度を受ける際にかかる費用の相場は10万円から20万円です。
住宅性能評価書の発行元は?国土交通大臣に登録した第三者評価機関が全国共通ルールのもと、住宅の性能を公平な立場で評価し、その結果を表示した書面です。 一般財団法人 住宅金融普及協会も、第三者評価機関の1機関です。
建設住宅性能評価書 誰が?住宅性能評価の申請は誰がすればよいのですか。 法律上、どなたが申請して頂いても構いません。 ただし、評価機関に住宅性能評価の申し込みを行う場合には、設計図面等の必要書類をそろえる必要があります。 したがって、申し込みを行う際にはあらかじめ設計をしてもらう工務店などに相談して下さい。
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